グロースマインドセットとは?フィックストマインドセットとの違いや特徴、育む方法を解説

個々人の能力向上やチームの生産性向上に必要な心構えとして、昨今注目されているのが「グロースマインドセット」です。Googleやマイクロソフトといった世界的な大企業も、グロースマインドセットの育成に取り組んでいます。グロースマインドセットにシフトすることで、企業の成長にもつながるのです。
 
この記事では、そもそもグロースマインドセットとは何かといった基本から、グロースマインドセットの特徴、育成方法について解説しています。この記事が、自分自身や組織がグロースマインドセットへシフトするための足掛かりとなれば幸いです。

マインドセットとは

そもそも、マインドセットの解説からしていきましょう。
マインドセットとは、人それぞれの固定的な考え方や先入観・価値観、無意識的に持っている思考パターンを指す用語です。人は生まれながらの性格や過去の経験、過去に受けた教育、周囲の影響などによって、無意識のうちにマインドセットが形成されます。
 
同じ出来事があってもマインドセットが異なれば、その出来事に対するとらえ方や解釈も異なるのです。たとえば、たくさん勉強をして準備をしたのにテストで悪い成績をとったとしましょう。
 
ネガティブなマインドセットを持つ人は「自分は劣った人間だ」と落ち込み、やる気をなくしてしまうかもしれません。一方、ポジティブなマインドセットを持つ人は「勉強方法のどこが悪かったのだろう」と考えます。そうして「次はやり方を変えて頑張ろう」と前を向けるのです。
 
このようにマインドセットによって、物事・出来事に対する捉え方や姿勢が180度変わってしまうこともあります。

グロースマインドセットとは

グロースマインドセットは、人間の基本的な資質は努力によって成長すると信じるマインドセットのことを指します。
 
才能や適性といった資質は、誰一人として同じではありません。生まれ持って資質の高い人もいれば、反対に資質の低い人もいます。ただし、グロースマインドセットでは、資質の低い人でも努力や経験次第で大きく成長すると信じるのです。
 
ダーウィンやトルストイも、幼少時代は凡庸な子どもと思われていました。しかし彼等は努力と経験によって、歴史に名を残すような天才へと成長したのです。
 
グロースマインドセットという概念は、スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・ドゥエック等によって提唱されました。グロースマインドセットは、自らの成長を信じるマインドなので「成長型マインドセット」「しなやかなマインドセット」とも呼ばれます。

フィックストマインドセットとの違い

フィックストマインドセットは、クローズマインドセットについて語られる際に、必ずと言っていいほど比較される対の概念です。
 
努力や経験によって人間の基本的な資質は成長すると考えるグロースマインドセットに対し、フィックストマインドセットは成長を否定します。フィックストマインドセットでは、自分の資質はあたかも石板に刻まれた文字や絵のように固定的で変わらないと考えるのです。
 
グロースマインドセットの提唱者であるキャロル・ドゥエックの著書では、フィックストマインドセットを「硬直マインドセット」とも呼んでいます。

たとえば、上の画像のAはフィックストマインドセットの持ち主、Bはグロースマインドセットの持ち主です。

改善すべきことに対して、あなたはグロースマインドセットの持ち主でしょうか。それともフィックストマインドセットの持ち主でしょうか。グロースマインドセットを強化するため、あるいはグロースマインドセットへシフトするため、あなたは何をするべきでしょうか。

グロースマインドセットを持つ人にみられる5つの特徴

グロースマインドセットを持つ人には、典型的な5つの特徴があります。以下、これらの特徴についてひとつずつみていきましょう。

【1】積極的に挑戦する

グロースマインドセットを持つ人は、積極的に挑戦を求めます。挑戦することで成長できると信じているからです。また高い壁にぶつかったときは、その柔軟な思考で解決策やアイデアを生み出します。
 
それに対し、フィックストマインドセットの持ち主は挑戦を好みません。挑戦による成長を信じていないからです。かえって欠点を隠し、必ず成功できるとわかっていることばかり繰り返します。

【2】乗り越えられるまで障害と向き合う

グロースマインドセットを持つ人は、障害で先に進めないときに乗り越えられるまで向き合おうとします。そうして障害を乗り越えるための解決策を客観的に検討し、それを行動に移すのです。
 
一方、フィックストマインドセットの持ち主は、障害に立ち向かおうとしません。「自分には障害を乗り越える能力がないのではないか」と怖じ気づいたり、能力のなさを恥じたりしてしまいます。

【3】努力を苦にしない

グロースマインドセットを持つ人は、努力を苦にしません。むしろ努力によって成長すると考え、努力に伴う痛みも乗り越えるのです。
 
一方、フィックストマインドセットの持ち主は、努力を忌まわしいものと考える傾向にあります。努力をする必要があるということは、裏を返せば能力が欠けている証拠と捉えるからです。フィックストマインドセットを持つ人は、現時点で自分の能力が至らないという事実を受け入れることができません。

【4】他者の批判を一旦受け入れる

グロースマインドセットを持つ人は、他者の批判を受け入れ自分に「何か足りなかったか」振り返ります。そうして改善案を探し出し、成長につなげるのです。
 
一方、フィックストマインドセットの持ち主は、他人からの批判に耳を貸しません。自分を評価してくれる人ばかりに近づき、結果的に学習する機会を失ってしまうのです。

【5】他者の成功を刺激にする

グロースマインドセットを持つ人は、他者の成功を自分への刺激として捉えます。そうして、その刺激を原動力として自分自身の成長へとつなげるのです。グロースマインドセットの持ち主にとって、真の成功とは自らの能力を証明できることではありません。新しいことを学び成長することこそ、成功と考えるのです。
 
一方で、フィックストマインドセットの持ち主は、他者の成功に嫉妬します。他者の成功によって、自分の能力不足が証明されることを恐れるからです。フィックストマインドセットの持ち主にとって、成功とは自分の能力を証明できることにあります。

グロースマインドセットを育む組織作り

組織においてグロースマインドセットを育むためには、適切な組織作りが欠かせません。ここでは「個々人でできること」「リーダー・マネージャーができること」にわけ、どのようなことが必要かみていきましょう。

【個々人でできること】

 

まずは自分のマインドセットを自覚する

まずは、フィックストマインドセットとグロースマインドセットのうち、自分がどちらの傾向にあるかを自覚しましょう。自分の傾向を把握したうえで、グロースマインドセットへシフトするように意識することが必要です。
 
自分のマインドセットを知るためには、前述した「グロースマインドセットを持つ人にみられる5つの特徴」が役立ちます。たとえば自分は挑戦することで成長できると信じ積極的に挑戦するか、挑戦を好まずできることばかり繰り返そうとするか振り返りましょう。もし挑戦を好まないタイプであれば、挑戦によって成長できると考え、能動的に挑戦を試みようと意識を変えていきましょう。
 

結果ではなく過程に目を向ける

仮に失敗しても「能力が足りない」と結果だけに目を向けるのでなく、失敗を成長の機会ととらえ過程に目を向けることを意識することが大切です。「どこで、どうして失敗したか」「どうすれば次は成功できるか」といったことを考え、失敗を次に活かすのです。そうすることで、少しずつ成長していくことに喜びを感じます。
 

挑戦を積み重ねる

コンフォートゾーン(居心地のいい場所)から抜け出して挑戦を積み重ね、小さな成功体験の数を増やすことで少しずつ自信をつけていくことができます。
 
なかなか成長を感じられない場合は、挑戦した数をカウントしてみましょう。試行錯誤しながら挑戦した数をカウントし、「これだけ努力したから先にすすめる筈だ」と前向きにとらえる思考習慣を身につけましょう。
 

目標を設定し、目標を達成するための努力をする

やみくもに努力するのでなく、あらかじめ目標を設定し、その目標を達成するための努力を行います。直面している課題の本質を考察して明確にした上で、どうすれば目標に向かって前進できるか検討するのです。そうして検討した内容にもとづいて、改善を試み努力を続けましょう。

【リーダー・マネージャーができること】

 

メンバーに対して「グロースマインドセット」の目線で接する

メンバーのグロースマインドセットを育むには、リーダーやマネージャーはメンバーに対しグロースマインドセットの目線で接することが大切です。「何を言ってもかわらないだろう」「できないだろう」とフィックストマインドセットの目線で接していては、グロースマインドセットは育まれませんし、成長もありません。
 
もちろん大前提として、リーダーやマネージャー自身が、自分自身に対してグロースマインドセットを持っていることが必要不可欠です。
 

定期的にフィードバックをおこなう

良質なフィードバックは、メンバーの成長と改善を促しグロースマインドセットの育成にもつながります。この場合、フィードバックは具体的で適切なものであることが必要です。必要以上に批判的・否定的なフィードバックは、メンバーの自尊心を傷つけることになるので適切とは言えません。またプロセスに注目し、失敗から学べることをメンバーに示すことが求められます。
 
【関連記事】チームを成功に導くための、効果的なフィードバックの与え方、受け取り方とは?
 

失敗を受け入れる

グロースマインドセットを育むためには、部下の失敗も成長のための機会として受け入れることが必要です。失敗を能力がないことの証明ととらえてしまえば、フィックストマインドセットにシフトすることになります。
 

心理的安全性を醸成する

グロースマインドセットを育むためには、心理的安全性(職場でどんな意見を言っても、拒絶されたり不利益を被ったりすることはないと安心できる状態)の醸成も必要不可欠です。心理的安全性があることで、メンバーは失敗を恐れず挑戦したり、チーム内で発言したりできるようになります。
 
【関連記事】心理的安全性とは?チームや職場にもたらす効果、高める方法を解説
 

挑戦と成長の機会を与える

メンバーに研修やワークショップの受講など能力を伸ばす機会を提供したり、新しいプロジェクトの担当などの責任を与えたりしてみましょう。メンバーの成長する仕組み・環境を確立することで、自ずとグロースマインドセットが育まれます。
 

まとめ

グロースマインドセットとは、努力によって人間の基本的な資質が成長すると信じるマインドセットです。グロースマインドセットをもつ人は、失敗を恐れずかえって成長に必要なこととして受け入れます。
 
グロースマインドセットと対をなすのが、フィックストマインドセットです。フィックストマインドセットをもつ人や組織は、失敗が「自分の能力が不足していることの証明」ととらえて恐れます。その結果、挑戦をしなくなってしまうのです。
 
個々人や組織が成長するためには、グロースマインドセットの育成が必要です。特に組織のグロースマインドセットを育成するには、失敗を恐れず成長のための挑戦を継続できる環境づくりが求められます。
 
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