DX人材とは?求められる背景や主な役割・スキル・獲得する方法まで解説

デジタル技術によって企業の文化やビジネスモデルの変革を目指すDX推進は、多くの企業にとって急務となっています。DX推進を成功させるために最も重要なポイントとなるのが、DX人材の確保です。
 
この記事ではDX人材の定義を振り返った上で、DX人材が求められている背景、DX人材に必要なスキル・マインド、DX人材の職種を解説します。DX人材を確保するための方法についてもまとめているので、あわせて参考にしていただければ幸いです。

DX人材とは

DX人材とはDX推進に必要なマインドとスキルを備え、企業がDXに取り組む上で重要な役割を果たす人材のことです。

経済産業省はDX人材を以下のように定義しています。

 

“「DX 人材」とは、自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材を指す。”

※参照元:経済産業省「DXレポート2」
 
新しいIT技術やサービスを導入したり、社内のデジタル化を進めたりするだけではDXとは呼びません。DXの目的はデジタル技術を駆使し、自社の文化を変革しつつ新しいビジネスモデルを生み出すことです。DX人材は、デジタル技術を熟知しているのはもちろん、DXの目的を理解し、自社がDXを推進する際の旗振り役・実行役になることが求められます。

DX人材が求められている背景

なぜ今、多くの企業でDX人材が求められているのでしょうか。以下、その主な理由についてみていきましょう。

DX人材の不足が深刻に

企業において、DX人材の不足が深刻な問題となっています。企業はDXを推進したくても、そもそもその役割が果たせる人材を十分に確保できていないのです。
 
IPAがまとめた「DX白書2023」をみると、日本企業の約半数(49.6%)はDX人材が「大幅に不足している」と考えていることが分かります。

DXを推進する人材の「量」の確保(2022年度)

参照元:IPA独立行政法人 情報処理推進機構「DX白書2023」
※グラフは参照元のデータをもとに作成
 
米国のデータをみると、DX人材が大幅に不足していると考えている企業は全体のわずか3.3%ですから、日本と大きな差があるのが分かります。
 
反対に、DX人材が足りている(「やや過剰である」「過不足はない」)と考えている日本企業は、全体の1割程(10.9%)に過ぎません。DX人材が足りていると考えている米国企業が全体の7割(73.4%)に及ぶのと比べ、こちらも大きな差があるのが分かるでしょう。

「2025年の崖」を克服しないと最大年間12兆円の経済損失

 
2025年の崖問題

「2025年の崖」問題とは、経済産業省が2018年に公開した「DXレポート」※にて紹介した定義です。経済産業省はこのレポートで、このまま日本企業がDXを推進できないままだと、近い将来に国際的なデジタル競争の敗者となるとしています。経済産業省がこの問題により算出した経済的な損失額は、年間で最大12兆円にものぼるとのことです。
 
経済産業省は、DXを推進し2025年の崖問題を解決するためには様々な課題があるとしています。たとえばDX推進に必要なIT人材の不足も大きな課題の1つです。
 
そのほか、企業のかかえるレガシーシステムが大きな問題として挙げられます。老朽化・複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムから脱却できないと、新しい技術には対応できません。さらにレガシーシステムを運用保守する費用が高騰し、IT予算の大部分をしめるようになることから、新しいシステムの導入も困難になるのです。
 
※経済産業省「DXレポート」

DX人材の主な役割・職種

DX人材の主な役割・職種

IPAがまとめた「デジタルスキル標準ver.1.0」※では、DX人材の主な役割・職種として以下を挙げています。
 
・ビジネスアーキテクト
・デザイナー
・データサイエンティスト
・ソフトウェアエンジニア
・サイバーセキュリティ

 
ここでは、上記役割・職種の概要をひとつずつみていきましょう。
 
※経済産業省 |「デジタルスキル標準 ver1.0」

ビジネスアーキテクト – 自社のDXを推進する中心的存在

ビジネスアーキテクトは、自社のDX推進を統括する存在です。ビジネスアーキテクトは自社のDX推進において目的を設定し、その責任者として関係者をコーディネートしながら目的の実現を目指します。ビジネスアーキテクトの責任は非常に重く、デジタル技術だけでなく自社を取り巻く経営環境や戦略まで熟知していることが必要です。

デザイナー – DXをデザインするスペシャリスト

デザイナーは文字通り、自社のDXをデザインするスペシャリストです。デザイナーは顧客・ユーザーの視点に立ち、DX推進の観点から製品・サービス・グラフィックなどをデザイン(設計)します。
 
デザイナーは任される役割ごとに、以下の通りさらに分類が可能です。

  

名称 主な役割
サービスデザイナー 顧客・ユーザーの課題を特定し、その課題を解決する製品・サービス方針の策定
UX/UIデザイナー 顧客体験(UX)や機能の配置、外観(UI)の設計
グラフィックデザイナー マーケティング媒体をはじめとした、各種コンテンツのデザイン

データサイエンティスト – データ活用によりDX推進を目指すスペシャリスト

データサイエンティストとは自社のDXを推進するため、データを活用するための仕組みを設計・実装・運用するスペシャリストです。データサイエンティストに期待される役割は、データの分析だけではありません。データに基づくビジネス戦略の検討や、データを収集・分析するための仕組みや環境の構築・運用なども、データサイエンティストの役割です。
 
データサイエンティストは任せられる役割ごとに、以下のように分類されます。

  

名称 主な役割
データビジネストラテジスト 自社の戦略に基づく、データ活用戦略の検討や実現など
データサイエンスプロフェッショナル データ処理や分析によって顧客価値の拡大や業務変革、ビジネス創出を実現するための知見創出など
データエンジニア データ分析環境の設計・実装・運用による、業務改革や顧客価値の拡大など

ソフトウェアエンジニア – ソフトウェアの設計・実装・運用を担うエンジニア

ソフトウェアエンジニアは、デジタル技術を駆使した製品やサービスの提供に必要なソフトウェアを設計・実装・運用するエンジニアです。ソフトウェアエンジニアはIT・デジタルに関わる高い技術力によって、DX推進や自社の競争力向上に貢献することが期待されます。
 
ソフトウェアエンジニアは任せられる役割ごとに、以下のように分類が可能です。

  

  

名称 主な役割
フロントエンドエンジニア 主にフロントエンド(インターフェイス/クライアントサイド)を担当
バックエンドエンジニア 主にサーバーサイドを担当
クラウドエンジニア/SRE ソフトウェア開発・運用環境の最適化や信頼性向上を担う
フィジカルコンピューティングエンジニア 現実世界(物理領域)のデジタル化を担う

サイバーセキュリティ – サイバーセキュリティを担当するエンジニア

サイバーセキュリティとは、自社のDX推進にあたって考えられるサイバーセキュリティリスク対策を担当するエンジニアです。DX推進によって、従来に比べIT部門以外のセキュリティリスクも高まると想定されます。サイバーセキュリティは全社的なサイバーセキュリティリスクを、網羅的に対策するための知見が求められるエンジニアです。
 
サイバーセキュリティは任せられる役割ごとに、以下のように分類されます。

名称 主な役割
サイバーセキュリティマネージャー ・サイバーセキュリティリスクの検討・評価
・サイバーセキュリティリスク対策の主導と管理
サイバーセキュリティエンジニア サイバーセキュリティリスク対策の導入・保守・運用

DX人材に求められるマインドセット

DX人材には知識やスキルだけでなく、DXを適切に推進するためのマインドセットも必要です。DX人材に求められる主なマインドセットとして、以下が挙げられます。
 
・周囲を巻き込む力
DXを推進するためには、社内の一部だけでなく全社的に取り組むことが必要です。DX人材は周囲を巻き込み、DX推進を目指すマインドセットが求められます。
 
・課題を発見・設定する力
DXを推進するために解決すべき課題を発見・設定し、仮説検証から課題解決まで導くマインドセットが求められます。
 
・好奇心・知的探求心
従来の手法にとらわれず、常に最先端の技術に興味をもち、それをDX推進に活かそうとする好奇心や知的探求心が求められます。
 
・チャレンジ精神
自社のDXを推進するためには、様々な困難が待ち受けていると考えられます。これらの困難にひるむのではなく、アジャイルなマインドで試行錯誤を繰り返し、乗り越えていこうとするチャレンジ精神がDX人材には必要です。

DX人材に必要なスキルとスキルマップ作成のために役立つ資料

DX人材には、幅広いスキルが求められます。たとえばDX推進では、IT技術の導入にとどまらず社内文化・体制の変革まで想定されることから、高いマネジメントスキルが必要です。最先端のデジタル技術や、セキュリティ・データ分析に関する知見・専門知識も求められます。そのほか、異なるスキルをもつ人材や異なる役割を担う人材と柔軟に連携できるコミュニケーション能力も必要です。
 
DX人材に必要なスキルを全て洗い出し、人材確保に必要なスキルマップを自社でゼロから作成するのは非常に困難で現実的とは言えません。そこで役に立つのが、IPAがまとめ経済産業省が公開している「デジタルスキル標準」※です。
 
※経済産業省 |「デジタルスキル標準 ver1.0」
 
デジタルスキル標準には、企業がDXを推進する上での指針やDX人材に求められるリテラシー・スキルなどがまとめられています。DX人材の役割ごとに求められるスキルについても、以下のように重要度とあわせてまとめられているので、スキルマップ作成に役立つでしょう。
 
デジタルスキル標準
興味のある方は、リンク先からぜひ「デジタルスキル標準」をダウンロードして活用ください。

DX人材を確保する方法

DX人材を確保するための方法はいくつか考えられます。企業は、これら方法を組み合わせて駆使することで、人材の不足を補うことが可能です。以下、実際にどのような方法があるかみていきましょう。

新入社員の育成

自社の未来を担う新入社員を、DX人材として育成できれば企業にとっても理想的です。新入社員研修の際に適切なDX教育を行うことにより、配属先でDX推進のための力強い戦力となってくれるでしょう。新入社員向けのDX教育を継続的に続けることで、DXに必要なスキルを備えた若手社員の層を厚くできるというメリットもあります。

既存社員のリスキリング

ビジネススキルが高く自社の戦略も熟知している既存社員をリスキリングすることで、自社に適したDX人材となってくれる可能性があります。

既存社員をリスキリングする際は、まずリテラシーの向上から始めることが重要です。基本的なリテラシーを備えていなければ、スキルの習得が難しい上に、高度なスキルをもったエンジニアなどの話を理解できません。DX教育の効率が悪くなってしまうでしょう。
 
【関連記事】リスキリングとは?注目される理由やメリット、導入事例もご紹介

中途採用

DX人材を、中途採用で確保することも検討するべきです。特に自社で育成が困難な専門性の高いスキルをもつDX人材は、中途採用で確保する方がはるかに効率がよいでしょう。
 
一方で、スキルの高いDX人材は多くの企業が求めているので、獲得競争が厳しいのは否めません。自社の戦力になるDX人材を確保するためにも、現在より柔軟な雇用形態や手厚い待遇を用意することが求められる可能性もあります。

外部コンサルタントへ委託

DX人材を迅速に確保するために、外部コンサルタントへ委託するのも有効な手段です。DX人材の育成に長けた外部コンサルタントへ委託することで、これまで難しかった自社でのDX人材育成や採用を実現できる可能性も高まります。また外部コンサルタントとアドバイザリーの契約をするだけでも、自社に不足しているUXのノウハウやIT知識を補うことも可能です。
 
外部コンサルタントを選ぶ際は、企業のDX推進についてどのような実績があるかチェックしましょう。契約前の段階で、DXに関する自社の状況や課題を理解し、適切なアドバイスをしてくれるか見極めることも必要です。

まとめ

DX人材とはデジタル技術に関する深い知見をはじめDX推進に必要なスキル・マインドを備え、企業がDXに取り組む上で必須な人材です。DX人材は任せられる役割により、DX推進の中心的な存在であるビジネスアーキテクトや、自社のDXを設計するデザイナーなどに分類されます。
 
DX人材を確保するためには、DXにどのようなマインドやスキルが必要かを理解することがまず重要です。その上で、既存社員のリスキリングや外部コンサルタントの委託などによって人材確保を目指します。

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