コロナ時代に「ビロンギング」を構築し、深めていくには

ダイバーシティ&インク¬ルージョン社会という言葉をご存知でしょうか?ダイバーシティ(diversity)とは言うまでもなく多様性のことで、国籍やジェンダー、年齢、障がいの有無にかかわらず幅広い人材を迎え入れることをいいます。
インクルージョン(Inclusion)は、直訳すると「包摂性」で、「一定の範囲に包み込むこと」。つまり、社会や組織が、あらゆる人材が能力を発揮できるよう働きかけることを指します。

“英語圏ではよく「パーティーに招待されること」が多様性、「ダンスに誘われること」が包摂性と例える。言い換えると多様性はパーティーにおける「事実」を、包摂性は参加者による「行動」を示す(「多様性と包摂性(D&I)の先にある新概念」より引用)”

この2つに加え、近年注目されている新しい概念が、「ビロンギング(belonging)」です。
ビロンギングは、「所属」「帰属性」などを意味する言葉ですが、この場合は、誰もが個性を殺さず安心して組織に貢献できる心地よさのことを意味します。先ほどのパーティーの例でいうと、

“「仮面を付けることなくパーティー社会に参加できる雰囲気」”( 「多様性と包摂性(D&I)の先にある新概念」より引用)

とも例えられます。
 
コロナにより、リモートワークなど新しい働き方が主流となった今、どのように「ビロンギング」を構築し、深めていけばよいのか?Hyper Islandアジアパシフィックのマネージングディレクターであるメラニー・クック氏の解説記事をご紹介いたします。
 

執筆者:Melanie Cook(メラニー・クック)氏プロフィール

メラニー・クック氏

Melanie Cook / Manager Director of Hyper Island Asia
 
Melanie Cook氏(メラニー・クック)は未来学者であり教育者であり、システム思想家、そして「技術的ヒューマニタス(Humanitas)」であると自分自身を捉えています。「ヒューマニタス」とはラテン語で、教育や希望、ヒトそのものを愛することを指す言葉です。彼女は職場におけるAI運用の影響について、深く探求し、彼女のミッションである未来の働き方を実現するため、何をすべきかに焦点を当てています。
 
彼女のキャリアは、ロンドンでのデータ管理の仕事から始まり、急速に進化するデータ管理及びデジタルマーケティング領域に従事しました。現在、クリエイティブ・ビジネススクールであるHyper Islandにて、デジタルビジネストランスフォーメーション領域を担当しています。また、彼女はAIを活用して働き手の声を表面化し、リーダーの自己成長を促進する#OpenLeadershipProjectの創設者でもあり、DMEXCO、SXSW、SXSWEdu、TEDxのステージに招待されている人気登壇者でもあります。
 
Hyper Islandはあらゆる領域・産業から集まる人の学習の旅路を支援する位置付けにあります。GSK, MetLife, Moët Hennessy, Standard Chartered、Unileverなど、企業との共創経験を活かし、それぞれの環境で、その先にある「実践の場」で活躍できるように、様々な力とスキルを提供しています。

 

コロナ時代に「ビロンギング」を構築し、深めていくには

人は、本質的に社会的な生き物です。
あらゆる研究によって、人間関係の質が、私たちの幸福を決定づける大きな要因となることが証明されています。遊びの場からオフィスまで、人々はどこかに含まれること、所属することを求めているのです。
 
職場における「ダイバーシティ(多様性)」と「インクルージョン(包摂性)」は生産性と創造性を促進し、「ビロンギング(帰属性)」は、仕事や世界中のリモートでつながるチームメイトへの愛を育みます。
「ダイバーシティ」「インクルージョン」「ビロンギング」、この3つによって、全体的な生産性が向上し、離職率は低下し、年間数百万ドルの節約になるともいわれています。
 
シンガポールでは、多くの組織があらゆる民族やジェンダー、社会経済的な背景からの代表者を擁する多様な労働力を持っていると自負しています。
しかし、変化をもたらすには、ダイバーシティは、意識的かつ誠実なインクルージョンによって強化されるべきなのです。
企業は、離れた場所で働いていても、開発の機会やキャリアアップに平等にかつ十分にアクセスできるようにすることで、すべての人の能力への信頼を示す必要があります。
結局のところ、チームのためにプレイするチャンスがないのであれば、サッカーチームに所属する意味はないのですから。
 
私は、インクルージョンは比較的容易に促進できると思います。
なぜなら、多くのマネージャーは、「ビジネスを成長させることで、自分自身も成長することができる」と信じている人々を雇用する傾向にあるからです。
 
このシンプルな戦略においてリーダーとして注意すべきことは、なぜ我々は人材に投資し、成長を促すのかということです。
 
それは、彼らが、“私たちの一人”になったからでしょうか、それとも、“私たちが彼らの一人を必要としているから”でしょうか。後者の理由は、組織が、個人の癖や資質、愚かさ、そして不屈の精神を大切にしていることを表しています。彼らがここに所属している意味を証明しています。
 
ダイバーシティは「事実」であり、インクルージョンは「行動」を表す概念ですが、ビロンギングは「感情」です。
 
コロナ禍により、リモートワークは世界的なスタンダードとなりました。孤独、排除、疎外は、チームのダイナミクスと文化を変えてしまいます。では、どのようにして、ビロンギングの感覚を実感するだけではなく、深めていけばいいのでしょうか。
 
私は世界を渡り歩いていた若い頃、新しい仕事を始めるたびに、自分はさらにプロフェッショナルになり、確実なイメージを持ち、より真剣になり、クスクス笑いを減らす…等と自分に言い聞かせていたことを覚えています。でもそれは決してうまくいきませんでした。その理由は、私がキャリアを築くために選んだ会社は、私のために私を望んでいたからです。本当の自分でいることができるという感覚は、とても貴重です。
 
私はこの問題に、リーダーとして、またリーダーシップチームのメンバーとして取り組んでいます。
 
雇用主は、新入社員が、会ったことのない同僚とのGoogleハングアウト中に、疎外感を持っているかもしれないことを認識する必要があります。企業は急速に移行したリモートワークという新たな働き方に対し、組織文化の再構築に悪戦苦闘していますが、疎外感に対し十分なケアができておらず、新入社員もベテラン社員も、スクリーンファーストの職場に所属しているという感覚を持っています。
 
2020年5月、世界保健機関(WHO)は、人々の不安レベルが高まるにつれ、支援するための十分な投資が必要であることを警告しました。では、どのように再構築すればいいのでしょうか?
 
まずは、個人の、そして会社の業績を透明化することで、「リモート・トラスト」を育成するところから始めます。多くの組織が、全社、チーム、1対1のミーティングの数、およびCEOとのAMA(Ask Me Anything=何でも聞いて)を増やしています。人は、自分がどんな状況にあるかを知る必要があるのです。
 
次に、この不完全な時代に「間違えてもいい」、「完璧でいることはできない」を信じることができるように、心理的安全性を醸成します。彼らは、同じ目的を持ち、信頼できるチームメイトによって支えられていると感じる必要があるのです。
 
最後に、一人ひとりの個性を理解・感謝することを全員のものとすることで、すべてのメンバーが自分らしくいることを可能にします。リーダーは、個々の柔軟な働き方とウェルネス・プログラム(従業員の心身の健康を維持すること )を作ることによって、口で言うだけでなく行動で示す必要があります。それは、組織が仕事内外のニューノーマルなニーズに気を配るということです。
 
快適な家の中で、もっとできること、やりたいことがたくさんあります。ですが、もし私たちが真剣にビロンギングについて考えるならば、家にいながら、職場の人間関係に投資する時間と空間を作り出す必要があるのです。
 
 
※この記事は、メラニー・クック氏による原文:Belonging in a post-pandemic worldを、ご本人の許可を得て翻訳、編集したものです。

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