ハイパーアイランドのAI&ビジネス関連プログラムの開発で学んだこと【パート3/3】

AIは今や、私たちの生活にとって欠かせない存在です。ですが、そもそもAIとは何か、何ができて何ができないのか、どのように協働していけばいいのか。考えたり理解している人はそれほど多くはないかもしれません。今回は、Hyper Island(ハイパーアイランド)のAIビジネスコンサルタントプログラムのマネージャー、Dano Marrによる3部構成の記事をお届けします。パート1では、「なぜ絵描きがAIを教えるのか?」、パート2では「 AIの問題とは果たして何か? 」について掘り下げてきました。このパートでは、私たちが共に思い描く世界、目新しくて恐怖心を抱くようなものにどのようにアプローチするか、そしてこの記事をどのように書いたかを掘り下げていきます。
 
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パート3:世界をどう見るか?

このパートでは、私たちが共に思い描く世界、目新しくて恐怖心を抱くようなものにどのようにアプローチするか、そしてこの記事をどのように書いたかを掘り下げていきます。
 
パート2では「メンタルモデル」について触れました。メンタルモデルは、基本的に思考や行動の前提となる価値観が作用する個々の生き方のようなもので、経験を通じて構築され、物語のようなものです。もし皆さんと私が同じメンタルモデルを共有していれば、簡単にコミュニケーションを取り、協力して仕事に取り組むことができるでしょう。もし皆さんと私が同じメンタルモデルを共有していなければ、おそらく摩擦が生じて、協力して仕事ができるようになるまでに相当苦労することになるでしょう。
 
ここからが人間関係の構築の超重要ポイントになります。この段階では、好奇心を持って相手の話に耳を傾け、「相手がどのように物事を見ているのか?」ということを理解することから始めなければなりません。それには勇気が必要です。私が自分自身に問い掛けるのは、「ここで見えていないものは何か? 私が学ぶべきことは何か?」ということです。しかしまた、ここで関係性という考えが浮上します。「理解できない相手とどのように関わるのか。理解できないこのテクノロジーとどのように関わるのか? 理解できないこの状況にどう関わるのか?」ということです。
 
今、世界が加速度的に変化していると言ったところで、誰も驚かないでしょう。誰もが知っていることです。世界は急速に変化しており、変化というのは困難なものです。しかし、私は世界の変化が困難をもたらしているのではなく、関係性の変化が困難をもたらしているのだと考えています。
 
「学習とどう関わるのか? 私自身とどう関わるのか? 相手とどのように関わるのか?」これが重要な問いだと思います。
 
私自身が専門知識を持たないプログラムを開発するに当たって課題となったことの1つは、付け焼き刃の教育を受け、人からどう思われるかという恐怖心にうまく対処できるようになることでした。私にはこの分野でのバックグラウンドがありません。あらゆるソースから発信されるコンテンツがあまりにも多く、奮闘していました。自分自身をアップデートし、テクノロジーにおける全ての変化に精通し、ビジネス課題の解決方法や、新たな市場で生まれる新たな機会に精通するために、どう時間を捻出するか今でも悩んでいます。率直に言ってかなり圧倒されています。このため、私自身に、そして学習に遅れを取らずについていくこと、また冷静でいることが大きな課題となっています。
 
恐怖心は、リスクが伴うと忍び寄ってくるものです。私は恐怖を感じたことがあります。私の話が分からないと批判されることに怯え、学生の前に立って何を言ったら良いのか分からなくなったり、あるいは誤った情報や事実でない情報を共有してしまったりして馬鹿にされることに怯えていたのです。そう、これは恐ろしいことです。しかし、1歳にも満たない私の小さい娘を見ているときにひらめきました。彼女はあるがままに世界と出合っているのです。彼女をボールの山やおもちゃの山の前に座らせても、紙切れをあげてもお構いなく、あるがままに受け止めて探求し始めるのです。何が起こるかを見たり、動かしたりしています。そして、もちろん時に彼女を圧倒し、感情的になったり、少々怯えたりするのです。
 
見慣れないものに対しては恐怖心を抱くものです。勇気ある問いというものは、「どうしたらこの見知らぬ目新しいものをほんの少しでも知ることができるか?」ということではないでしょうか。そして試してみる。それだけでいいのです。見知らぬ目新しいものをほんの少し知っていくこと。それは心地良いものではないでしょう。誰にとってもそうなのです。あえて不快感を掘り下げていくのです。MITのPeter Senge(ピーター・センゲ)は、学習する組織に関する著作である『The Fifth Discipline』の中で、自己マスタリー、つまり、自己理解の重要性について述べています。
 
自分自身を理解することで、自分自身がどのように作用しているのか、どのように関わっているのかを理解できるようになり、自分自身の仕事も、誰かと取り組む仕事も、より楽に行うことができるのです。結果として、自分自身を理解しようと努めているチームメンバーはより効果的に協力して仕事に取り組むことができ、そのチームメンバーにとって重要なことに対してもより効果的に対応することができます。では、どれだけ自分自身を理解しているでしょうか? どれだけ相手を理解しているでしょうか? 一緒に見知らぬ目新しいものに出合い、少しだけでも知るところから始められるでしょうか? 子供たちのように楽しむ方法を見つけられると思いますか? この実験的な考え方を持ち、好奇心と勇気を持って課題に取り組むことが人生を面白くする1つなのです。
 
もちろん、時に恐れを抱くこともあるでしょう。しかし、恐れを抱くときこそ重要なことだと分かります。AIという点でも、必ずしも独自のモデルをクラウドに展開する必要はないでしょう。しかし、遊んでみて、そして「AIは何ができるのか?」「AIと私の関係とは何か?」ということを理解していくことはできます。独自の方法でAIを知っていくことができるのです。なぜなら、望んでも望まなくても、AIは皆さんのことを知っていくからです。AIはここにいて、プロセスを変化させています。そして、私たちの関わり方を変えているのです。私たちが用いるプロセス、つまり関係性のシステムは気づくことができるものであり、どのように影響するのかを学ぶことができるものなのです。
 
根本的には、私たちが共有する人間性こそが常に重要なことです。それこそが私たちの関心事であり、私たちがつながる方法なのです。AIに足を踏み入れるかどうか、新たなプロセスを試すかどうか、誰かと難しい会話するかどうか・・・少し恐怖心を抱くかどうかにかかわらず、皆さんにもあえて不快感を掘り下げてほしいのです。そこでこそ、成長と可能性が現実のものとなるからです。

このようにしてつくられた

私は文章を書くことは難しく、話すことは幾分簡単だと思っています。そのため、自分のプロセスで遊んだらどうだろう? AIをこのコンテンツづくりに少し絡められるのではないか、そう思いました。
 

そこで、私はスマホを取り出しました。何人かのスピーカーのメモを書き出し、最初の原稿を直接ボイスメモアプリに録音しました。それをクラウドにアップロードして、SpeechText.AIを使って5分弱でスクリプトに起こしました。これは非常に興味深いもので、このおかげで私が書いた(話した)ものを読み返して、何カ所か編集することができたのです。そしてもう一度やってみる。さらに一歩踏み込んで、私が話すことを実際にAIに書いてもらうことにしました。OpenAI のGPT-3 ベータ版Playgroundを使い、情報を少し与えてテキストを完成するよう要求しました。そのようにして、この記事の冒頭を含む約1,000語が出てきたのです。
 
もともと、私はMicrosoft AzurePeltarionのノーコードプラットフォームにつなげて、独自で何かをつくりたいと思っていました。というのも、自分自身でAIをトレーニングすることで、AIモデルがどのように機能するかという核心をより理解できると思ったからです。しかし時間が足らずに、「間に合わせ」でできるようなオンラインソリューションを見つけることにしました。思っていたほどの時間の節約にはなりませんでしたが、これをつくり出すのはとても楽しいものでした。AIの可能性や仕組み、AIの欠点はどこなのかといった点についても多くを学びましたし、GPT-3を使って私が伝えようとしているメッセージと関連し、しっくりくるような文章の出力が得られるまでに何度も試行錯誤しました。また、「自分がどのように作用し、どのように考えるのか、つまり、書いたりつくり出したりするプロセスとはどのようなものか」という自分自身のプロセスについても多くを学ぶことができました。
 
また、私は最近のコンテンツ制作における編集、監修、書き直し、再録音といった作業にどれほどの時間を要するのかを理解しています。実に大変な作業です。何かを自分の望むような形にするには多大な労力と注意力が必要なのです。そして、その大変さを実感した今、AIが最適化できる手作業がたくさんあるのだろうと思っています。自分ではまだ調べていませんが、音声の録音、文章の校正、行間やスペース(空白)、uhms(えーと)などを削除するという点では、おそらくすでにAIの最適化があるのではないかと思っています。もしこれらのツールについてご存知なら私に教えてください。というのも、AIがすでに関与しているものがどれだけあるのか、とても興味があるからです。
 
もし皆さんがご自身でAIを試してみたければ、今すぐ遊べて、利用可能な面白いツールのリストが下記にあります。もちろんGoogleには皆さんが試すことができる実験がたくさんあります。Microsoftも、Lobe.aiTeachable Machineといった多くの実験を行っています。Microsoft Paintのように絵を描くことができるNVIDIAのツールもチェックしてみてください。非常に面白いです。もしシステム思考が好きで、流通におけるストック&フロー、そしてAIについて学びたい方にはbeer gameをおすすめします。システム遅延が発生したときに何が起きるか、AIでどのようにビール会社が発注する数を最適化できるかを楽しく学べます。
 
もちろんSpeechText.AIも要チェックです。これは私がたった今、音声を文字に起こすために使用したものです。また、OpenAI のGPT-3 ベータ版Playgroundもおすすめします。私は、AIが実際にできることを用いて実験したり、それを実感することがとても楽しいと思っています。ここでの結論がまさにこの記事のポイントです。私はAIの使い方について試行錯誤したことで、AIとの関係が少しだけ深まりました。このコンテンツにおいて私たちは共著者と言えるでしょう。
 
AIの活用で失敗しないようじっくり学習したいという場合は、AI時代に成功するためのガイドブック『ZERO TO AI』がおすすめです。この著者であるGianluca Mauro(ジャンルカ・マロウ)は業界のリーダーであり、ハイパーアイランドのコラボレーターです。Niccolo Valigiとの共著になります。とても読みやすく、また面白いものになっています。ビジネス、そしてビジネスが及ぼす影響にフォーカスしたものになっており、強くおすすめします。
 
すでにAIに少々なじみがあるけれども、AIの実装方法を知りたいときは、私たちのプログラムパートナーである「Peltarion」をおすすめします。「Peltarion」はクラウドプラットフォームで、目的はなんであれ、簡単にAIを始めることができ、そして構築・デプロイすることができます。また、ノーコード・ローコードプラットフォームを使いこなすための良質なコンテンツやチュートリアルも数多く公開されています。すぐに始めることができ、楽しく、簡単です。ぜひチェックしてみてください。
 
最後までお付き合いいただいた皆さんに、この場をお借りしてお礼を言いたいと思います。これをつくり出すに当たってかなりのプロセスがありました。私も多くのことを学びました。皆さんにとっても何か学びがあったならうれしく思います。皆さんからの連絡は大歓迎です。ぜひつながりましょう。時間を割いて読んでいただきありがとうございました。
 
時間と決断、それしかありません。それでは。

 
※この記事は、Dano Marr氏による原文『What I Learned in creating a program about AI & Business at Hyper Island (part 3/3)』を許可を得て翻訳、編集したものです。

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