ハイブリッド型の職場環境で生産性をかじ取りする方法とは

コロナ禍をきっかけに、多くの企業がリモートワークや、ハイブリッド型ワークを導入して久しくなりました。柔軟な働き方ができるようになった一方で、以前はわかりやすく目に見えていた生産性が測りにくくなっています。その中でリーダーはどのようにメンバーを評価し、マネジメントしていけばよいのでしょうか?Hyper IslandアジアパシフィックでManaging Directorを務めるMelanie Cook(メラニー・クック)氏の記事をご紹介します。
 
執筆者:Melanie Cook(メラニー・クック), Managing Director, Hyper Island Asia Pacific
メラニークック氏
 

コロナ以前は、生産性というのは目に見えるものでした。朝5時に起床し、ランニング。食物繊維が豊富なバナナスムージーを作り、本を2章分読む。これらは全て朝9時の出勤前に済ませ、職場で生産性の第2ラウンドを発揮する-誰もがこんな記事を目にしていたことでしょう。
 
しかし今は違います。コロナ禍において業績管理や生産性のチェックポイントがより頻繁で継続的になり、透明性が高くなるにつれて、一貫性や公正性を担保する画期的なシステムがますます必要となってきました。
 
この危機に直面し、職場における業績や生産性は、絶え間なく進化する環境の中で確かに変化してきました。業績と生産性の関連は、会社勤めをしているどの人にも付いて回ってきました。多くの人が辞め、多くの人が燃え尽きる中、リーダーや管理職は、現在どのように成功を測ればいいかわからずにいるのです。

リモートチームの生産性を測る上での課題

知的労働者にとって、仕事の質と量を測ることは長年の問題です。そして、これはリモートワークによって深刻化しました。45%の人が、以前よりも平日の勤務時間が増えたと答え、70%近くの人が週末にも働くようになったと答えているのです。
 
大切なのは、リーダーが個々の生産性をどのように測り、どのように認識するか、そして最も重要なのは、それをどのように評価するかということを自問することです。今は明らかに、オフィスで過ごした時間で生産性を測ることはできません。コロナ禍であろうとなかろうと、誰もそんなことをすべきではなかったのです。しかし、リモートワークやハイブリッド型ワークが定着した今、リーダーは自分自身にとっても、組織にとっても、生産性をどのように定義し、測定するかを決めなければならないのです。
 
Googleが行った研究「プロジェクト・オキシジェン(Project Oxygen)」において、チームベースの組織構造に対する貴重な洞察が明らかになりました。Googleはチームの有効性について、役員によるチーム評価、チームリーダーによる評価、他のチームメンバーによる評価、そして最後に四半期ごとのノルマに対する営業成績を使って算出しました。リーダーは、個人やラインの上司、チームからの360度評価で、個々のメンバーの生産性に関する豊富で定性的な評価を収集することができるのです。
 
この研究は、誰が個々人のチームを決めるべきか、という疑問も投げかけています。ほぼ全ての職務に学際的なアプローチが必要となる世界において、部門や指揮命令系統で個々人のチームを定義することで十分なのでしょうか?

データドリブンな評価における共感の価値

伝統的な評価システムは見直されなければなりません。個々の生活における要求、チームやビジネスへの関与に対する共感を組み込む必要があるのです。たとえば、リーダーは、パンデミック時代の現実を受け入れる評価システムに、ワークライフインテグレーション(仕事とプライベートを統合する考え方)に関する質問を加えることを検討するべきです。
 
「何が得意で、何をするために給料をもらうのか」、「何をすることが好きなのか」、または「あなたの組織はどのような目的を果たしたいのか」といった質問を考えてください。リーダーは、評価プロセスに共感を組み込みながら、仕事での内省を促すことによって、メンバーが強みや情熱、そして目的を生かせる役割と責任を特定するよう働き掛けることができます。
 
データドリブンなプロセスにおいて共感の価値を維持するために、人事のリーダーは、個々のメンバーが仕事、そしてチームや組織に関与することによって何を求めているのかを見極める評価システムを設計する必要があるのです。

リーダーはいかに業績管理における透明性や公正性を高めるか

業績管理は、社員に対してただ目標を達成したかどうかを伝えるものであってはならず、社員に成功への道筋をつけ、目標が何か、そしてどのようにそれ到達するのかを示すものでなければなりません。
 
教育における学習の評価と、学習のための評価というコンセプトを考えてみましょう。前者は、学生が学んだことがあればそれをテストするという累積的なものです。対して後者は、試験結果を活用して、教授法や指導法の設計を改善するという形成的なものなのです。
 
成果が不確かであり、障害を乗り越える方法が不明瞭である複雑なビジネス環境において、形成的なデータというのはとても有用です。というのも、何が起きたかを単純に要約するのではなく、次に何をすべきかを示すものだからです。
 
進捗を測り、なすべきことを特定する業績管理システムを採用することにより、個々人が目標を達成する可能性を高めるだけではなく、公正で透明性のあるシステムを構築することができるのです。

共感と生産性を両立させる

結局のところ、メンバーは機械の歯車でもなく、Excelの中のデータでもなく、人間なのです。真の洞察を得たいなら、全てのデータと同様に、業績管理は正しい文脈の中で、思いやりをもって解釈されなければなりません。いつもは勤勉である人が、突然ぼんやりとなってしまったり、能力が落ちてしまったように見えたときは、深く堀り下げて根本的な原因を探ることが大切です。そして、そのような文脈を理解するためには、単にメンバーとしてではなく、人として、その人そのものへの共感と関心が求められるのです。
 
幸福感のある社員はより生産性が高いという事実に加え、リーダーが職場において共感力を発揮することがかつてないほど重要になってきました。これまでにないほどの選択肢があり、多くの人が優先順位を見直しているという世の中において、リーダーは、ただ関心を寄せることによって、職場環境を望ましいものに、そして楽しいものにすることができるのです。

 

<Melanie Cook(メラニー・クック)氏プロフィール>

Melanie Cook氏(メラニー・クック)は未来学者であり教育者であり、システム思想家、そして「技術的ヒューマニタス(Humanitas)」であると自分自身を捉えています。「ヒューマニタス」とはラテン語で、教育や希望、ヒトそのものを愛することを指す言葉です。彼女は職場におけるAI運用の影響について、深く探求し、彼女のミッションである未来の働き方を実現するため、何をすべきかに焦点を当てています。
 
彼女のキャリアは、ロンドンでのデータ管理の仕事から始まり、急速に進化するデータ管理及びデジタルマーケティング領域に従事しました。現在、クリエイティブ・ビジネススクールであるHyper Islandにて、デジタルビジネストランスフォーメーション領域を担当しています。また、彼女はAIを活用して働き手の声を表面化し、リーダーの自己成長を促進する#OpenLeadershipProjectの創設者でもあり、DMEXCO、SXSW、SXSWEdu、TEDxのステージに招待されている人気登壇者でもあります。
 
Hyper Islandはあらゆる領域・産業から集まる人の学習の旅路を支援する位置付けにあります。GSK, MetLife, Moët Hennessy, Standard Chartered、Unileverなど、企業との共創経験を活かし、それぞれの環境で、その先にある「実践の場」で活躍できるように、様々な力とスキルを提供しています。

 
 
※この記事は、Melanie Cook(メラニー・クック)氏による原文『Navigating productivity in hybrid world of work』を許可を得て翻訳、編集したものです。

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