【森 杏奈氏インタビュー】Hyper Island Japanの成立ちと展望

dd postを運営するティ・ディ・エスが日本向けに展開する、北欧発のクリエイティブビジネススクール、Hyper Island(ハイパーアイランド)。2020年11月に日本で初めてオープンコースが開講し、先日第2期までのすべてのコースが終了しました。同校のラーニングデザインディレクターであり、ファシリテーターも務める森杏奈に、Hyper Island Japanの立ち上げから現在に至るまでのこと、そして今後のことについても伺いました。

森 杏奈氏 プロフィール

Hyper Island Japan 森杏奈

2001年テイ・ディ・エス入社。グラフィックデザイナー、アートディレクターとして活動の後、NYにてデザイン思考を学ぶ。2018年よりHyper Islandのシンガポール校に留学。仕事と育児を両立しながらデジタルマネジメント修士を取得。Hyper Island Japanの立ち上げに携わり、現在は同校のラーニングデザインディレクターを務める。

Hyper Island Japanの成立ち

-あらためて、Hyper Island Japanを立ち上げるまでの経緯について教えてください。

弊社の海外視察メンバーが北欧に渡航した際、Hyper Islandに出会いました。創業者のジョナサン・ブリッグスがアジアの拠点であるシンガポールにいるので、ぜひ会いに行ってみては?と勧められたことがきっかけで、TDSとHyper Islandのご縁ができ、私のHyper Islandのシンガポール校への留学が決まりました。最初はデジタルマネジメント・プログラムの学びを通じて何かしらのかたちで日本企業のサポートができれば、という漠然とした目標を持っていましたが、学びを続けるうちに、 Hyper Islandの考え方、アプローチ、すべてが日本のビジネスパーソンにとって必要なものだと考えるようになり、新規事業を担当する上司と共にHyper Island Japanを立ち上げることになりました。
シンガポールのメンバーと何度もディスカッションや戦略ミーティングを重ね、日本向けに2020年4月に対面型のプログラムで開講する予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で実施が難しくなりました。そこからオンライン向けに1から設計をし直し、2020年11月、日本向けオープンコースを開講することができました。

Hyper Islandのファシリテーターとは

-Hyper Islandには講師のような存在はなく、代わりに学習者に問題を探求するよう指導するファシリテーターが存在します。ファシリテーターを務めるにあたってどのようなトレーニングをされたのでしょうか。

ファシリテーターはHyper Islandの核となるものです。私は、尊敬するHyper Islandアジアパシフィックのマネージングディレクターであるメラニーとプログラム・マネージャーのイネスに、Hyper Island流のファシリテーションを手取り足取り教えていただきました。
また、創業者のジョナサンのワークショップのサポートをさせていただいたこともすごく勉強になりました。ワークショップ中、まるでJAZZセッションのようにどんどん設計が変更されていきます。でもゴールは見失わない。そのための準備といくつもの仮説を持つことなど、あの時、セルフファシリテーションというものを学んだと思います。

そもそもファシリテーターの役割は、会議やミーティングの目標、成果、設定そのものをデザインするところから始まるのですが、シンガポールでのワークショップでもデザインから参加し、自分のファシリテーションをするっていうのを全部やらせてもらいました。日本でも同じことを日本人向けにやって。そこを全部並走してもらいながらノウハウを教えてもらいました。ここもやはりHyper流というか、実際自分でやってみることが大事、そこから何を学んで次に役立てるのか?という教えられ方だったと思います。今でも、新しいコースの設計や参加者のフィードバックを共有し、シンガポールのファシリテーターにたくさんのアドバイスをもらいながら進めています。

Hyper Islandのグローバル戦略

-Hyper Islandはスウェーデンに本校があるクリエイティブ・ビジネススクールですが、世界に8つの拠点があるんですよね。

はい。ストックホルム、 カールスクルーナ、 サンパウロ、 ロンドン、 マンチェスター、シンガポール、ニューヨーク、そして日本に加え、先日、9番目となるスイス校が新しく立ち上がったのですが、私たち日本とやり方が似ていて。マスターの卒業生で、もともとデザインをやっていた人が立ち上げているという共通点があるんです。
また、私たち日本チームがやったことをモデルとして、他のアジアの国でも似たような形でできないかって模索したりもしていると聞いたときはとても嬉しかったです。
 
-日本がモデルとなってさらに拠点が増えたら素晴らしいですね。他の拠点との交流もあるのでしょうか?

はい。Hyper Islandはグローバルネットワークをもっていて、常に繋がっています。
シンガポールのファシリテーターとの交流、生徒同士の交流もあり、密に関わっています。
ファシリテーターからの声がけで、7か国同時プロジェクトのグローバル案件にJapanとして参加させてもらったこともありました。
 
以前、こんなことがありました。イギリスのマンチェスター校のフルタイム・マスターコースのドイツ人学生が、最終論文を日本で書きたいということで、ファシリテーターを通じて相談を受けたのです。私は上司に相談し、彼をプロジェクトメンバーとして約4か月間TDSに在籍できるようにしてもらいました。ちょうど私も論文を書く時期だったので、お互いに壁打ちというか、一緒にメンタリングやフィードバックしながら書くことができました。同じ境遇の同級生が職場にいるっていうのはとても心強かったですね。
 
また最近立ち上がったHyper Island Singaporeの卒業生向けのプラットフォームではたくさんの交流やイベント、議論、プロジェクトが行われていて、活発な情報交換をしています。質の高い交流と学びの機会がそこにあるので、私自身、情報源の6割くらいはそのコミュニティからとっていると思います。
毎週月曜日はスタンドアップチェックイン(いわゆる朝会)があったり、毎週水曜日にあるトピックについて議論する場があったり、とても交流が活発です。
一度スタンドアップミーティングに出たときに、数年先輩にあたるメキシコ人の卒業生が日本にいることがわかって、その翌週に上野公園で待ち合わせして、ジョギングついでに朝8時にスタバでいろんな話をして。そういう、全然予期していなかった出会いがあるので、卒業してからもずっと面白いです。

オープンコース第2期までを終えてのリフレクション

-Hyper Island Japanでは、先日オープンコース第2期までがすべて終了しましたが、振り返ってみていかがでしたか?

2期も、とてもバラエティ豊かな業種、業界からたくさんの方に参加していただき、ありがたく思っています。課題意識のある方々が前向きに取り組んでいて、どのコースも熱量高く実施できたと思います。様々な職種や業種の方が混ざって、いくつかのテーマについて参加者同士が議論していく中で、それぞれの人がそれぞれの学びを持ち帰っている様子が見て取れ、『お互いから学ぶ』ということがより実践できていると思いました。
 
-日本人ならではの特徴や傾向などはありますか?また、ファシリテーションをする上でどのような点を意識されたのでしょうか。

ワークショップにおいて日本人だから、ということはあえて意識していませんが、こちらから投げかけなくても参加者からどんどん質問や意見が来るということは無いかもしれません。また、全体に問いかけたとき、空気を読むための変な”間”ができてしまったり、エンジンがかかるまでに時間がかかるという特徴はあります。そこに関しては、私たちファシリテーターが心理的安全性を確保し、「どんなことを言っても大丈夫」という雰囲気をつくることを心掛けています。

心理的安全性を確保するために活用しているのは最初に行うチェックインです。チェックインでは、何かしらの問いに対し全員に発言をしてもらうのですが、そのときに気を付けていることは、どんな的外れな意見がでてきても絶対に否定しないこと。どんな意見を言ってもいいんだよっていう場を作ることです。ワークショップ中では特に日本人は皆正解を当てに行く習性があるので、正解はないから当てにいかなくていいんですよっていうことを知ってもらうために、あえて的外れな意見を取り上げたりもしています。

オープンコース第3期~今後の展望

-11月からは第3期がスタートしますが、何かこれまでとの違いや変化はあるのでしょうか?

第3期からは、デザインシンキング、デジタルテクノロジー、ビジネストランスフォーメーションという既存の3コースに加え、デジタルマーケティング&グロースハッキングというコースが新設されます。海外でも人気のコースで、チャネル(流入経路)の使い分けだったり、日々進化していくマーケティングについて、ゲーミフィケーションの要素を取り入れながら皆で考えていく単元になります。
 
オープンコース第3期は、こちらのページからお申込みになれます。
https://www.tds-g.co.jp/hi_opencourse/
 
-新しいコースも楽しみですね。最後に、今後の展望をお聞かせください。

今後の展望としては、オープンコースを継続していくことで、多くの方にHyper Islandの学び方について触れていただく機会をより加速させ、促進していきたいということ。もうひとつは、これまで参加された方々が、参加時期を超えて、同じHyper Islandの共通言語を持つ者同士として交流いただけるような場を提供していけたら、と思っています。

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