海外デザインファーム紹介 #1 Honey Creative Business Consultancy (London, England)

dd postsを運営するTDSは2016年より北米・欧州を中心に海外視察を重ね、現在は20社を超えるデザインファームとネットワークを構築しています。そのうちの数社とはパートナーシップ契約を結び、双方の得意分野で協業しながら現在、ビジネスに取り組んでいます。
今回はその1社であり、ブランドコンサルティングで結果を出し続けているイギリスの「Honey Creative Business Consultancy(ハニークリエイティブビジネスコンサルタンシー)」をご紹介します。

あえて小規模を保つブランドコンサルティング集団

Honeyは2006年創業のイギリスのロンドンに拠点を置くクリエイティブ ブランド コンサルティングファームです。人数は30名程度の少数精鋭ですが、大手企業のブランディングからスタートアップの0→1のブランド作りまで幅広く手がけています。また、近年日本でも需要が高まりつつあるエンプロイー・エンゲージメント(従業員満足度)向上のための職場環境や社内文化の改革などのインナーコミュニケーションにも力を注いでいます。彼らのアウトプットはグラフィックだけでなく、Webサイトやアプリまで幅広いことが特徴です。

we make more happen.

彼らのミッションは“商業的インパクトを出すこと”です。つまり、ブランディングという目に見えにくいものに投資をした分、しっかり結果を出すというROI(投資利益率)を意識したビジネスを行っています。
ブランドが抱えている問題を効果的に解決すること、そしてより魅力的に価値のあるものにすること、これらが彼らのコアバリューです。

創業当時からつづくクライアントとの関係

クライアントはイギリスの老舗ブランドHarrodsやTescoといった大手企業からスタートアップまで多種多様。イギリス国内にとどまらず、欧州や北米の企業にもソリューションを提供しています。1つのプロジェクトが終了した後も継続的な関係をつづけ、創業当時からコンタクトをとっているクライアントもいます。それでは彼らが手がけた代表的な仕事をいくつかご紹介しましょう。

Work1: カタールガス リブランディング


まずはカタールガスのリブランディングです。
カタールガスは液化天然ガス(LNG)産業を開拓し、今や世界最大のLNG供給会社ですが、1984年の創業以来ブランドのアップデートが行われていませんでした。また、他の生産ブランドに多くの市場シェアを奪われていたため、ブランドの再開発に投資することで市場シェアを拡大する方針をとりました。
Honeyはカタールガスの新しいブランドポジショニングを定義し、世界クラスのサービス組織としてのカタールガスを強調して訴求。競合他社と差別化する独自のBI(ブランド・アイデンティティ)・VI(ヴィジュアル・アイデンティティ)の制作を進めました。
具体的には世界中のスタッフや顧客に対して40件のインタビューとワークショップを行い、「世界のプレミアLNG会社」という新しいブランドポジショニングとブランド価値の定義を支援。効果の最大化を図り、ロゴの変更などクライアントのオーダーには含まれていなかった提案も行いました。
その結果、広告やパンフレット、プレゼンテーション、看板、車両にいたるまであらゆるツールの制作を担い、「世界のプレミアLNG会社」という新たなポジションの確立に寄与したのです。

Work2: ガトウィック空港 インナーコミュニケーション


企業のブランディングをする一方で、同時にその企業で働く従業員に対してもソリューションを提供しています。イギリスのガトウィック空港の事例では、インナーコミュニケーションツールとしてVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)を制作し、すべての従業員がプロセスを理解できるようにしました。
その結果、なんと70%も苦情が減少、95%の人が5分以内にセキュリティを通過できるようになりました。
このことはイギリスの地元紙で“ From hell to heaven in one year. (1年間で地獄から天国へ)”と称され、空港を利用する顧客への改善はもちろん、そこで働く従業員の責任感が飛躍的に向上するなど、アウター・インナー双方に多大なインパクトを与えました。

BX is the new UX

UX(ユーザーエクスペリエンス)という言葉は日本でも浸透し始めていますが、彼らは “BX(ブランドエクスペリエンス)を考えることこそがUX(ユーザーエクスペリエンス)である” としています。
BXとは顧客に向けられたすべてのことを指す包括的な意味で、その一部にUXがあるというのが彼らの主張です。
このテーマについては2018年1月に東京ミッドタウンで行ったUXイベントでも詳しく語られています。

2018年1月 UXイベントレポートはこちら

ゼネラリスト vs スペシャリスト

日本の広告業界において“ 広告代理店 ”は非常に大きな力を持ちますが、これは世界的に見ても特異な文化であり、クライアントと直接仕事をする海外デザインファームからすると理解し難いビジネスモデルのようです。
もちろん彼らの拠点であるイギリスにも“エージェンシー(代理店)” はありますが、ブランディング領域においてここ数十年でエージェンシーのポジションに変化が起きているとHoneyのエグゼクティブ クリエイティブ ディレクターであるグレッグ氏はディスカッションの際に語っていました。

かつて欧州でも“エージェンシー”がブランディング領域を担ってきましたが、20年ほど前からブランディング、ブランドコンサルティング会社がパワーを持つようになってきているようです。その理由として、「企業がブランディングの大切さに気がつき始めたこと、広告代理店は“問題を解決する”ということに関してのスペシャリストではないからである」とグレッグ氏は語っていました。
対応領域が広いことよりもスペシャリストであることは、企業においても人においてもこれからもっと重要なことになっていくのだなと感じました。

ロンドン流 ビジネス朝活

Honeyはナレッジ共有や新しいアイデアを生み出すことを目的として2つのイベントを定期的に開催しています。1つは会社名にちなみ「Honey On Toast」と名付けられたクライアントと一緒にディスカッションをしながら朝食を食べる朝食勉強会。もう1つはゲストスピーカーを招き、毎回決められたトピックについて各チームでディスカッションを行う「Honey Buzz」という30名規模のイベント。参加者は同業種に限らず、紹介などでつながり様々な人が集うようです。
さらにHoneyのinstagramは毎週更新担当が当番制になっていたりと、非常にオープンな職場と環境です。

今回我々が訪問するにあたり対応してくれたグレッグ氏はイギリス人らしく真顔でジョークを飛ばしてくるとても面白いビジネスパーソンです。2度目の訪問でCEOにお会いした際も、従業員との距離がとても近く感じられ、和気あいあいとした雰囲気にとても好感が持てました。そして一番感銘を受けたことはミーティングのセッティングからディナーまで素晴らしいおもてなしを受けたことです。各席には、Honeyオリジナルのフォーマットにミーティングのアジェンダが記載されたシートが設置され、お水、コーヒー、紅茶(ここにイギリスらしさを感じます)の用意はもちろん、長丁場のミーティングだったため、ランチのケータリングの用意までされていました。
海外ファームのオフィスを訪れた際の共通点はいくつかあり、これについてはまた別の機会に触れたいと思いますが、スマートにこなす英国紳士淑女の振る舞いと精神は我々も見習わなきゃいけないね、と話しながら帰国しました。
絶えずマーケット分析をし、環境に合わせて変わり続けることを大切にしているHoney。そしてしっかり価値のあるものを提供しようとするクライアントとブランドへの誠実な姿勢は、日本企業にもフィットするのではないかと思います。

Honey Creative Business Consultancy

https://honey.co.uk/

dd posts副編集長。2016年TDSの新規事業開発チームに参画し、マーケターとしてこれまで20社以上の海外デザインファームを訪問。リサーチから訪問という一連の経験から得たことを発信したいと思いdd postsのライティングも行う。東京生まれ東京育ち。最近の関心はサーフィンと釣り。

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