未来に立ち向かうために、誰もが「デジタル・ブレイブリー」を必要とする理由

今回は、Hyper Islandの創立者であるJonathan Briggs(ジョナサン・ブリッグス)氏の記事「Why we all need Digital Bravery to face the future」をご紹介いたします。変化し続けるデジタルの世界において、常に、「リアル・ワールド・レディ(最新の「現実」へ対応する)」であり続けるために、「デジタル・ブレイブリー(デジタルの激しい変化や進化を受け入れていく勇気を持つこと)」が大切だとジョナサン氏は言います。これからのデジタル・リーダーはどのような心構えを持ち、どのようにデジタル・ブレイブリーを示していけばよいのでしょうか?

【執筆者】Jonathan Briggs(ジョナサン・ブリッグス)/Founder, Hyper Island

ジョナサン・ブリックス氏
1996年、組織をデジタルかつグローバルに改革したいと考える個人や企業のために、Hyper Islandを創立。革新的な学びの創造者であり、IKEAやMoët Hennessy、Paul Smith、Unileverなどグローバルクライアントの戦略パートナーを務めている。OTHER media、Crimson Sunbird など自ら事業を立ち上げ、技術、アジリティ、データ、IoTや 興味深いソフトウェアのイノベーションを探求している。また、Unileverのデジタル諮問委員会に在籍し、NTUシンガポールのアジアコンシューマー・インサイト研究所の アソシエート・フェローとして勤務。過去には、ロンドンのキングストン大学でも教鞭を執っていた。

変化し続けるデジタルの世界

1996年にHyper Islandを設立したとき、私たちは、学生が自ら選んだ業界で価値ある人材になるために最も必要なものは何か、と自問しました。当時デジタルはマルチメディアと呼ばれていましたが、他のマルチメディア・スクールでPhotoshopやCD-ROMの制作を教えている中、私たちはリーダーシップ、ビジネス、テクノロジー、そして創造性を教えることにしたのです。これらのハイレベルな課題解決スキルは大当たりで、テクノロジーが変化する中でもこのようなスキルによって学生たちはレジリエンスを保ち、貴重な人材であり続けることができました。
 
2021年、Hyper Islandは25周年を迎え、コースや学生、そして私たち自身が常に時代に適したものであるために、あらゆる部分を見直してきました。私たちは「リアル・ワールド・レディ(最新の「現実」へ対応する)」であり続けたいと思っていますし、興味深い会話であると確信を持って言えるのです。
 
では、何が変化しているのでしょうか?テクノロジーから話を始めましょう。今日では言うまでもなく、あなたが思い浮かべるほぼ全ての企業がウェブサイトを持ち、必要ならモバイルアプリを持ち、幅広いSNSチャネルでのページを持ち、ほぼ確実にeコマースを通じたビジネスを展開しています。データの重要性が認識されるようになり、分析、顧客洞察そして競合分析は当たり前のものとなりました。これにより多くの人がデジタルトランスフォーメーションは終わり、他の何かに移行する時が来たとの結論に至っています。
 
ある企業が「業務完了」を宣言する一方、データ・サイエンティスト、AIエキスパート、アプリ開発者、ネットワーク管理者、システムエンジニア、DevOpsチームやその他の専門家を雇うことに躍起になっている企業もあります。もちろん、これらの役割は極めて重要ですが、新たに採用した人材の価値を最大化するためには、リーダーがこれらの人材をまとめて、ビジネスにおける課題や機会を解決しなければなりません。そのためには、リーダーとしてこれらの役割のつながりをしっかりと理解することが必要となり、私たちHyper Islandが「デジタル・ブレイブリー」と呼んでいるものが必要となります。
 
デジタル技術は、単にITチームまたはデジタルトランスフォーメーション・ディレクターに任せておけばよいというようなものではありません。ビジネスや意思決定プロセスに与える影響があまりにも大きいからです。リーダーは刻々と変化する技術の範囲や可能性を正しく理解しなければなりません。つまり、リーダーは自ら手を動かしてその中に飛び込まなければならないのです。

これからのデジタル・リーダーがやってはいけないこと

確信を持たない!

私たちは複雑な世界に生きており、そこでの問題は自分たちだけで対処できると思っているよりもはるかに大きいということがよくあります。だから、謙虚になって周囲に耳を傾け、あらゆる専門家の視点から何が起きているのかについて幅広く感じ取ってください。

変わる、変わらないという言葉を使うのはやめる。口だけでは何も変わらない

たとえば、スプリントはプロジェクトを急がせるためのものではなく、戦略は実行されることによってのみ強くなり、チームワークはお互いの目的と連携があって初めて有効になります。

無駄なことをやめる!

2022年に入り、すでにあるものから共有し、借用し、コピーし、そして着想を得るということが、かつてないほどに簡単にできるようになりました。プロジェクトを始める前に、「誰がこれをもう見事にやってのけたのか?」と自問してください。車輪を再発明する前に、まずそのアイデアを試してみるのです。
 

変化が一夜にして起こると思わない

学習というものを扱っている私たちは、学習というものが生涯の旅であると断言できるのです。常にこのことを心に留めておいてください。

デジタル・ブレイブリーをどのように示すか

リーダー(そして、Hyper Islandへ学びに来ているような将来のリーダーたち)は、デジタル・ブレイブリー(デジタルの激しい変化や進化を受け入れていく勇気を持つこと)の真の意味を理解するために、以下の4点ができるようになる必要があります。

世界を感じる

世界を感じるとは、トレンドを察知し、顧客に耳を傾け、リアルタイムデータを扱い、そして新しい技術を試すことができるということです。例えばFacebookのブランド変更、Appleの発明、イケアの実験、またはスタートアップ企業の発表といったものがどんな意味を持つのか、すべてのリーダーはチームの中でいち早く考えなければならないのです。そのためには、難しい質問を投げかける好奇心あふれるメンバーでチームを構成しておくことが必要です。「もし〜なら?」「どうしたら〜できるか?」「これとこれをつなげたら何が起こるか?」といった、可能性を問うような会話をする時間をつくらなければなりません。

つながりを見出す

つながりを見出すためには、サイロではなく、システム全体で考えなければなりません。リーダーには、全体像やモデル、サプライチェーン、そしてネットワークを可視化する一連のツールが必要です。そして、チームに多様性を持たせるため、異なる背景を持つ人たちを加え、異なる視点を取り込む必要が出てきます。真の多様性とは、異なる環境や地理、そして文化において、どのようにアイデアが展開されるのかを問うことです。

未来を生み出す

3番目のデジタル・ブレイブリーは、おそらく多くのリーダーにとって最も受け入れがたいスキルではないかと思います。というのも、何かを自分たちで試して、自分たちでつくり出さなければならないからです。ブロックチェーンやメタバース、またはデジタルツインについて聞いたことがあるというだけでは不十分です。また、これらについて『フィナンシャル・タイムズ』の付録で定期的に読むだけでも不十分なのです。腕まくりをして何かを築かなければなりません。個々のテクノロジー、またはテクノロジーの組み合わせを実際に経験することで初めて、自分のビジネスにとっての可能性や課題、そして機会を見いだすことができるのです。「ものづくり」を通じて、リーダーとそのチームは未来を創造し、少なくともその先にある未来に備えることができるのです。
 
未来を生み出すためには、ビジネスで一般的に取り入れられるよりも長期的な視野を持つことが必要です。少なくとも「現在または近い将来」そして「今後」という2つの異なる時間軸を検討してください。私たちは新しいテクノロジーについて、その初期段階で不便・遅い、もしくは使いづらい、という理由で否定しまうことがよくあります。リーダーは、新たなテクノロジーによって起こりうる未来を目先の欠点を越えた先に見ていかなければならいし、それをビジネスに結びつけていく必要があるのです。「作る」ことを、新たなビジネスモデル、働き方、そして顧客やスタッフとの関わりなどの「試す」ことに広げてください。
 
実験と創造の文化を構築することは、強力なチームの会話を生み出し、多くの場合強力な結果をもたらすでしょう。上下関係や肩書によって影響されることなく、探求を続けてください。成果について話し合う時間を作り、他のビジネスと共有するための学びを得てください。

常に変化に備える

最後のスキルは、いつ行動を起こすべきかを知ること、つまり、アイデアが主流になる前の瞬間を知ることです。これは、これまでのやり方を捨てて、不確実性やリスクを受け入れることを意味するかもしれません。しかし、リスクを受け入れ、より良い未来を設計することはレジリエンスを生み出します。ポストコロナの世界では、これが全ての組織や個人にとって必要となるでしょう。
 
これらのスキルに並行して、考え方の転換も必要です。未来はゼロサム型のプロジェクトではないことを理解し、触媒と競合の両方と協力することによって、長期戦で勝負し続けることができます。つまり、私たちは同じような課題を共有し、力を結集することで集団の潜在能力を実現することができるのです。しかし、他の人がこれを理解するまで待っていてはいけません。好奇心と大胆さをもって動き始めてください!
 
デジタル・ブレイブリーは今後25年間の楽しみなテーマです。これについてはまだ決まったものがあるわけではなく、私たちが試行錯誤して学びつつ、自ら進化させていくものなのです。私たちは1996年以来一貫して、個人や企業が変化に対処してより良い未来に備えられるよう取り組んできました。私たちも勇気を出していきます!

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